体型研究プロジェクト
下半身のお悩みを解決 DHC×文化服装学院×キイヤ 体型研究プロジェクト
下半身,体型
―まずは実態を掴む
文化服装学院ならではの文化・服装形態機能研究所
幼児から高齢者までの体型や衣服パターンの研究開発を目的として創設された研究所。ここでは衣服製作に必要な身体計測を行うことができます。今回のプロジェクトでは実際に体型計測をおこない、『40代女性の現状を掴む』ところからはじまりました。
――計測機器を設置している研究所があることは当学院の特徴でもあります。今回はDHCがターゲットとしている40代女性の計測を実施し、そのデータから見えてきた体型特徴をボディ開発につなげることができました。
計測内容に3次元計測を取り入れた理由は「形」を知ることが重要だからです。みなさんも「20代30代の頃と身体が変わってきたな」と感じていると思いますが、数値だけでは形は分かりません。どこがどのように変化したのかを知るためには個々の形を知る必要があります。3次元計測で得られた形状データを平均化し、その平均形状を3Dプリンターで出力しました。今回は4分の1サイズで実体化したものと、身体の断面形状に着目し、年代別ボディとの比較検証をおこないました。

- 3Dスキャナー
- 3Dプリンターで実体化した4分の1サイズの平均形状
また、計測は体型特徴の傾向を掴む1次計測と2次計測の2段階で実施し、より多くのデータを集めることで精度を高めています。
その結果、バストサイズの変化、ウエストの厚みの形状変化、ヒップの形状変化など40代の体型特徴が見えてきたのです。DHCが目指す『20代から身体が変化したことは自覚しているけれど、きれいに洋服を着たいと願っている健康志向の女性』に合わせたボディを作るためのデータを得ることができました。もちろん体型には個人差があり、今回誕生したDHCオリジナルボディがすべての40代の方に当てはまる訳ではありません。しかし、体型が変化しても美しくありたい、ファッションを楽しみたい方に、DHCオリジナルボディで作った洋服を着て、より自信を持っていただく…、その土台ができたと思っています。

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見澤 ふみ
文化・服装形態機能研究所 副所長
年代別に並べてみると…
青年から40代に見られた変化は3点。バストのふくらみにはあまり変化はありませんが、背面から脇にかけて皮下脂肪が付き、ウエストは前側に厚みが出て、ヒップはやや下垂し扁平になる傾向が見られました。
日本のファッションを担う
文化服装学院
2023年に創立100周年を迎える文化服装学院は、世界中のファッション業界へ約30万人以上の卒業生を輩出する伝統と実績のある学校です。
――文化服装学院は1923年に我が国最初の洋裁教育の各種学校として創立しました。並木伊三郎先生、遠藤政次郎先生が学院の基盤を創り今日に至っています。また文化出版局発行のファッション誌「装苑」は、モノがない時代に幅広い方々にファッションを広める役割を果たしました。「装苑賞」というコンテストを設け、ファッションの登竜門としてコシノジュンコさん、山本耀司さん、故高田賢三さんら多くの卒業生が受賞し、世界に羽ばたいている歴史があります。
今後、学院はどうあるべきか
ファッションに求められることは
これからは1着の服を長く大切に着る時代になるでしょう。「よい服」とは何かを教え、理解を深めていくことこそが学院の使命だと考えています。また、人との繋がりや経験によって培われる感性や創造力も大切です。学院はそれらを担う場所であり、技術教育の場でもあります。ハサミさえあれば世界中どこでも通用する立体裁断などの基礎的な技術、知識をゆらぐことなく伝承していきます。
服を買わないことがサスティナビリティだとも言われる時代ですが、ファッションはその人の生き方に繋がります。おしゃれを楽しむことで自己表現ができ、元気にもなれます。女性が美しく生きていくための取り組みを、今後もみなさんと考えたいと思っています。

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相原 幸子
文化服装学院 学院長
―データ検証からボディへ
世界的ボディメーカーのクラフトマンシップ
株式会社キイヤは、服作りの現場のお客様と長きにわたり共に学び、歩んで来たボディメーカーで
す。ご要望を形に表す原型制作を原型師がおこない、それを量産する工程と職人の手仕事が歴史を刻み、今に引き継がれています。
――今回は40代女性をターゲットに絞り込み、体型データやライフスタイルの分析資料を基にフォルムを造形しました。体型を美しく保つことへの意識が高いDHCのお客様像をボディの形として表したいというご要望を受けて、それをデータに加味しボディを作りました。
ボディの造形を進めるにあたり、DHCのパタンナーとも綿密に意見の交換をおこないました。服作りの作業性を高めつつ、美しい理想の服が作れるようにバストやヒップの位置、脚の開き具合など美的感性も丁寧に表現しています。その結果DHC のオリジナルボディは、エレガントで、いつも美しくありたい、ファッションを楽しみたいという、40代女性の理想形に仕上がったのです。

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鶉 雄次郎
株式会社キイヤ 原型師
- 正確に水平と垂直を設定する「定盤」で、左右対称の原型を作り上げます。
- 張り子製のボディには、主に、社内で使用したコピー紙やパターン製図用の紙などをリサイクルした、専用の再生紙が使われます
- 張り子のボディは、乾燥する段階で微細な歪みや変形が生じます。それを、経験を積んだ職人の技術で正確に左右対称に修正します。
- ボディに被せる布は、専用のオリジナル生地です。服作りで重要な前後中心線、肩線、脇線などが指定の位置からずれないようにしっかり作り込みます。
- 最後にKiiya のロゴマークをプリントします。
日本のファッションを支える
ボディ専業メーカー「キイヤ」
株式会社キイヤは1919年創業、紳士服の仕立屋(テーラー)用の人台の製造からはじまり、日本の服飾の発展と共に歩みつづけてきました。ファッション教育、さらにアパレル・ファッション業界を支え、2019年に100周年を迎えた世界有数のボディメーカーです。
――張り子の製作の仕方は、基本的には昔から変わっていません。ただし時代と共にお客様から求められるボディの形は変化しています。それに合わせて正確な形を作るために工夫が凝らされています。さまざまなニーズにお応えできるのが弊社の強みです。ボディは、
第1に左右対称であることが重要です。パタンナーは職業柄、ミリ単位の違いにも敏感です。可能な限りご要望にお応えし、すべての工程で高い精度を追究しています。数字の世界と感性の世界のコミュニケーションを取り持つのもボディメーカーの重要な仕事です。
美しく、着心地のよい服を作るためには、ヌードボディに適切なゆるみと作りたい服に応じた運動量を加味し、理想のフォルムを造形するのがキイヤの技術です。

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濱田 和男
株式会社キイヤ 代表取締役 社長
ボディから原型を製作
そして待望の商品化へ
でき上がったボディを基に、パターン研究で名高い本橋先生と共に、オリジナルの原型、そしてパターン(型紙)の製作をしました。
――洋服は、型紙製作の土台となる「原型」を基準とし、分量感、シルエット、デザイン線を
決めていきます。大人の女性がより美しく見える服のために、今回完成したオリジナルボディに合わせて、新たに「原型」を作ることにしました。
ボディができ上がり各世代と比較しましたが、40代は背中には丸みが、前丈も長めになってきた傾向がありました。下半身ボディでは、最も違っていたのは腹部です。青年ボディと違い腹部に丸みが出て股上丈が長めになっていました。また、ヒップが少し落ちてきている傾向もあります。反対に、太ももは意外と細くなっているので、ムダなシワが出ないバランスのよいラインを追求し原型に落とし込みました。この原型を使用しパターンを引きました。お腹が出て見えないように、フロントのタック位置をミリ単位で移動させたりなど、細かく調整し、“ こうありたい” というシルエットを、いかに美しく見せるか、その都度、納得するまで修正してパンツが完成しました。
年齢を重ねてもさらに美しく見せるには、どのようにしていけばいいのか…を常に考え、素晴らしい服作りをしていきたいです。

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本橋 奈枝子
株式会社本橋企画 代表取締役社長